視線の先に

 無意識のうちに、私の目は貴方を追っている……。




   視線の先に




 何故かはわからないけど……気になるの、ルークのこと。母性本能みたいなものかしら? 気が付くとつい、彼を目で追ってしまう。

 そして、今日もまた…………────


「ティア?」

 背後から急に掛けられた声に、ビクリと体が跳ねる。

「ふふ。今日もルークを見ていたんですね。熱心なことです」

「たっ、大佐……っ」

 自分の行動が知られている恥ずかしさに、頬が熱を持つのがわかる。

「た、ただボーっとしていただけよ……っ」

 その場しのぎの言い訳をするが、ジェイドはクスクス笑うばかり。

「ルークのこと、好き、なんですねぇ」

「!?」

 それどころかいきなりな切り出しに、ティアは益々顔を赤くして慌てる。

「なっ、ちっ、違っ……」

 ジェイドはそんなティアの姿を、面白そうに見ている。……どう見ても遊ばれていた。

「可愛いですねぇ」

「っ!?」

 追い討ちをかけるような台詞に、ティアは更に慌て取り乱す。

「なっ、いきなり何っ!! 冗談はやめてっ……!」

「冗談ではありませんよ」

 取り乱しながらも何とか言葉にするが、余裕満々の笑みと共に躱された。

「っ……」

 恥ずかしさにうつ向いていると、「私はそんなティアが好きですよ」と、さらりと凄いことを言い放ち、ジェイドは頭が真っ白になって何も言えなくなったティアに、ひらひらと手を振り去っていく。

 暫く、時間が止まっていた。


 好き?

 私のことが……?


 ……好き……?


「すっ……好きですって!?」

 我に返ってその場にへたり込み手で頬を覆う。熱い。

「……なによっ、からかって……私は、大佐のことなんて……」

 そう呟くが、心の何処かでは嬉しく思っている自分もいて。ずっと、頬の熱は冷めなくて……


 それからはまた無意識に。

 ティアの視線はジェイドを追った……────