暗殺者はお好き?

 何故だか俺に懐いてしまった暗殺者は、何故だか俺が帰ると部屋にいて────。





「ユーリぃ」

「何だまたいるのかお前は」

 帰宅早々出迎えの声があがる。ベッドにうつ伏せ状態のザギ。待っている間暇でゴロゴロしてたんだろう。シーツの乱れから予測する。最初は武力行使で追い出したもんだが、慣れは怖い。今では「またか」で済んでしまう。

「……ったく、お前暇だな」

 笑いながらベッドの空いたスペースに腰掛けると、猫のように寄り添ってきて。

「あぁ……おまえがいないと退屈で仕方ない」

 腕を絡ませながら体を密接させられる。

「ん……ユーリぃ」

 首に腕を回して、甘えたような声を出す。そのまま身を乗り出し、膝の上に跨る形になる。跨って、唇を寄せてきて。

「んむ……」

 ちゅっと吸うような口づけを数回繰り返して。俺が応えないのにもどかしさを感じたのか最後に噛み付くように口づける。

「ったく……早速甘えたモードかよ」

 あまりにザギが積極的だから、いつも触発されちまう。膝上に乗って俺より高い位置にある頭を引き寄せ、反撃と言わんばかりに抑え、貪るように口づけてやる。

「ふ……ちゅ……んふ」

 俺が応えた喜びなのか、単に激しいキスが好きなのか。うっとりとした表情で舌を差し出してくる。その舌を抜き取るかのように強く吸い上げるとそれだけでヒクヒクと震えて。

「っは……たまんねぇ、たまんねぇよ」

 だらしなく涎を垂らしながら。けれどそれを拭うことなく。両手は下肢に下がって行き、腰からズボンをずり下ろす。更にはうざったそうに、肩に掴まって完全に両脚から抜き取り投げ捨てた。

「もうこんなかよ?」

 露わになった下腹部には既に反応を示したザギ自身が見えて。ツンと突っついてやればふるふると揺れて先汁を垂らす。

「んっ……」

 俺の目の前だっていうのに恥じることなく。ザギは堪えきれずに自らの手で掴み、扱き始める。

「ッハァ、んハァ、ァ」

「何、我慢できないの?」

「ぅあ、してぇ、やりてぇ……」

 淫靡に揺らめく瞳は俺を映して、くねらせた腰は淫らに俺を誘う。……こんなに煽られて黙って見てるなんて高等技術、生憎持ち合わせちゃいない。ザギの手の上に己の手を重ね、共に扱く。垂れた先汁が竿全体に行き渡るねちっこい音が耳に届いた。

「ッハァ! んっ、んっ」

 熱く反ったザギ自身は今にも絶頂を迎えそうにビクビクと震えて。

「ァァっ、いいっ、ユーリ! ユーリぃ! ……っ」

 そのまま強く擦り上げれば自身と同様に背中を反らせて。体内に溜まった白濁液を濁音と共に吐き出した。

「ハァ……っん」

 恍惚な表情で手に付いた己の白濁を舐めとると、再び首に手を回し寄り添ってくる。

「溜まってたのな」

 量の多さを指摘し笑ってやると、少し不快そうな顔をして。まるで「お前以外とはしてねぇ」と言いたそうな……。ったく、こういう所が可愛いって感じちまうんだよな。心の中で苦笑しながら、指は先程ザギが放った液を絡めとり後孔へと運ぶ。入り口を数回クルクルと撫でるとひくつくそこに、遠慮なく二本の指を侵入させた。

「アぁァっ!」

 指を開くように動かし、少しずつ広げていく。あまり奥までは入れていないが、それだけでもザギのそれはイく前と同じように上を向いて。

「ユーリぃ……」

 もどかしそうに腰を揺らし、口付けてくる。求めるようにザギの手が俺の股間部に触れ、弄る。このまま少し慣らして……なんて思ってたけどそうはさせてくれないらしい。

「早く……早くおまえのコレぇ、俺んナカにぶち込めよ……」

「ホントお前って……色気ねえよな」

 溜め息を吐きながらも昂ぶりは健在で。衣服を下ろし、ザギに煽られて硬くいきり立った自身を取り出す。

「ん……ユーリのぉ」

「欲しいの?」

「んハッ、焦らすな……焦らすなよ」

 ザギが腰を突き出したことで、俺とザギの性器が触れ合う。ザギのヌメリが俺自身を濡らして、細く糸を引く。

「はいはい……」

 そのいやらしさが堪らなくて。焦らしてる余裕なんてこっちだってない。ザギの腰を持ち上げ、焦点を合わせ。勢いよく自身に向かって下ろした。

「んァあぁぁっ!」

 ザギの体重も手伝って、容赦なく奥まで貫く。あまり慣らしてないせいでキツい内壁が締め付けるように絡みつく。

「っく……」

 内側の熱に溶けそうな感覚に思わずこっちまで声が出てしまう。

「ユーリ、もっと……もっとだ……っ」

 自ら腰を揺らし快楽を得ようとして、その度に喘ぎをあげて。

「お前……盛りすぎじゃねぇ、のっ?」

 押し上げるように腰を打ちつけ、奥へ奥へと突き進む。結合部からぬちぬちとやらしい音が響く。

「アっ、ハっ、……ユーリぃっ」

 涎を垂らしながら乱れるザギ。幼さと淫靡さのコントラストが俺を興奮させる。

「あんまり、体重かけんなよ」

 派手な配色の髪が眼前で揺れる。こっちは腰を支えてるっていうのに、前に体重を掛けてしがみついてくるから。

「っおい……っ!」

 言ってるそばから、なんて突っ込む隙もなく。

 わざとじゃないかってくらいの力で押され、背中が勢いよく後ろに沈む。ボフッと鈍い音を発し、ベッドから埃が舞う。

「アぁぁっ」

 体勢が変わったことで挿入の角度も変わって、イイ場所を掠めたのか。自分で押し倒しておきながら、呆気なく俺の腹の上に精を放った。黒い服に放たれた白濁液がいやに目立つ。

「はぁ、いい……いいぞユーリぃ……」

 イった直後できゅうきゅうと締め付けられ。気が逸れた瞬間に俺までイきそうになった。

「っは、なぁ、ユーリもイクのか?」

 まるで自分が攻めるかのように俺の頭の左右に手を付いて、荒い声を吐く。

「イケよ……っイッちまえよ、っはぁ、出しちまえよぉ」

 相変わらずな色気のない口調と、対照的な肢体に更に煽られて。腰を掴んでラストスパートとばかりに激しく突き上げる。

「望み通り……出してやるよ」

「ァあ、あっ、アァッ」

 前立腺を突き上げれば一際大きく鳴いて。服越しにでもわかる、ツンと尖った乳首を見せつけるかのように胸を突き出す。

「イイっ、イイっ! ユーリ、ユーリぃっ」

「ッは、……んとに、やらしーヤツ」

 でも誰にでも見せるわけじゃない。こんなヤツだけど、一途なんだから人はわからないもんである。随分と厄介な相手に惚れられちまったけど、今じゃ嫌な気も悪い気もしない。むしろ、可愛いんだよこれが……。

「俺も、いつの間にかお前に惚れちまったわけか」

 グッと奥まで突き上げれば、ビクリと体が震え一層締め付けられる。その刺激と同時にザギの体内に己の精を吐き出す。

「ぅっ、あぅっ! アァっっ!」

 注がれる感覚に打ち震え、たまらずザギも同時に3度目の精を放った。

「ふ……っぅ、ぁ」

 まだ繋がったまま。自分の精液で濡れる俺の腹の上に気にせず倒れ込んで来て。ぐちゅ、と音を発てザギの服にまで白濁が移る。

「ユーリ……」

 とろんとした視線をこっちに向ける。声色からして眠そうだ。

満足したらもう寝るのかよ……。そう思う反面、ザギなら仕方ないかと笑ってしまう自分がいて。

「起きたらちゃんと風呂入れよ?」

 言いながら頭を撫でてやる。聞いていたのかどうか、返事がないまま早くもザギの寝息が響く。

 本能のままに生きる暗殺者。自分勝手で口も悪いけど……

「ん……ゆーり……」

 俺は当分、こいつの世話役を逃れられそうにない。






2008.11.6