思いやって、愛し合って。

 何もない。聞こえるのは風の音、鳥の囀り。

 シノンの傍らには、未だ幼さを残す表情の割に、筋肉質な青髪の男が腰を下ろしている。

 こうして幾刻が過ぎただろうか。二人の間には、何もない。シノンが横へと投げ出した手の上に、アイクの武骨な手が重なり握られている。ただそれだけだ。

 触れ合う左手だけが徐々に熱を持ち、汗ばんできた。

「……」

(何か、言えよ!)

 シノンはいい加減、限界だった。最初は語らずでもよかった。でもそれも最初は、だ。

 朝、ここで顔を合わせ、「シノン、おはよう」。交わした言葉はそれだけだ。少し間を開けて隣に腰掛けられ、しばらくして手を握られた。それ以外のことは、何もない。

 静寂は好きだ。だがそれは一人でいる時の話だ。勿論、二人静かに過ごすのも、嫌いじゃあない。けど、限度ってもんがあんだろ。一緒に居ても、毎回毎回、何も言わない。何もしない。こいつが一体何を考えてるのかが、ちっともわかりゃしねえ。こんなに静かなのに……いや、静かであればあるほど、その静寂はシノンを少しずつ苛立たせていった。

 ムカついて、大人しく握られていた手を、振り払い離した。流石にその途端、こっちに視線を向けてきたから、ここぞとばかりに睨みつけてやる。

「……熱かったか? すまん」

 だが、アイクが発した本日二言目の台詞は、全くの見当違いで。

(そうじゃ、ねえだろ!)

「てめえが何考えてんのか、さっぱりわかんねえよ」

 シノンは苛立ちにまかせて言い放つ。アイクのことだ、驚いているんだろうが表情からはあまりわからない。何故いきなり怒っているんだと。純粋に、焦るでもなく。返ってきたのは疑問符を浮かべた言葉。

「怒っているのか?」

「あぁ、怒ってるね」

 怒ってねえよなんて返そうもんなら、そうかと納得されかねない。だから隠さず言葉にする。

「何でかわかるか?」

「……すまん、わからん」

 そしてその苛立ちに気付いてほしくて、シノンは問いを問いで返した。

 しかし、しばし眉を寄せ考えていたが、アイクには思い当たる事はなかったようだ。不思議そうな顔をして、シノンの解を待っているように見える。

 思わず漏れる溜息ひとつ。

「はぁ……。てめえに聞いた俺が馬鹿だったよ」

「シノン、教えてくれないか」

「その筋肉で出来た脳ミソ、少しは使ってみろってんだ」

「使ってみたが、俺にはお前が急に不機嫌になる理由なんて思い付かん」

 嫌味にも動じず、アイクらしい飾らないきっぱりとした答え。わかったフリしてヘラヘラしないところは、まあ、こいつの良いところではあると思うが。

(少しは悔しくねえのかよ)

「はぁ……」

 考える度漏れる溜息。幾ら時間を与えようが、この様子じゃどうせ正解になんて辿りつきゃしないだろう。言うか我慢か、シノンには二通りの選択肢しかなかった。このまま同じ事の繰り返しなんてごめんだ。とすれば、自ずと答えは出る。

「てめえが、……何もしないのが悪い」

 遠回りじゃ意味がない。ストレートに伝えるしかない。そう思って、直球を投げてやった……つもりだ。

「……何をしてほしいんだ」

 が、アイクは怪訝な顔をしている。受け取る側は、どうやらそれを直球と認識できなかったようだ。

「っ何を、って、何でもいいから何かしろよ!」

「してほしいことがあるから怒っているんだろう?」

「してほしいことなんてねえよ!」

 自分なりに精一杯伝えたことが伝わらない現実に、シノンはカッとなり立ち上がり声を荒らげた。

(何一人で熱くなってんだよ俺)

 ハッとして、気まずくなり視線を逸らす。だがアイクは、怒鳴られようが自分のペースでシノンに続いて立ち上がり、唯でさえ近い距離を詰め、シノンの顔を覗き込んでくる。

「シノン」

「…………何だよ」

「口付けてもいいか」

「っ、はぁ!?」

 聞かずとも、少しでも動けば唇が触れてしまうような距離で唐突に。そしてその距離感ばかりを気にしている間に、腰に手を回されて、体も引き寄せられていて。

「なん、でいきなり、んなこと……」

「何かをしろと言っただろう。だからだ」

 相変わらず読めない表情で、アイクは淡々と告げる。

「だからじゃねえ……顔、ちけぇよ……」

「なんだ、やっぱり嫌か」

「嫌とは、言ってねえ……」

「じゃあ、いいんだな」

 自分は目線も泳いで、体温が上昇するのがわかるのに。目の前の男は眉一つ動かさず、イエスかノーかの、その答えだけを待っている。

「……るせえ、こんな、中途半端ならさっさと、っっ!」

 だから俺なりの、イエスの言葉を言い終わる前に。

「ん、……っ」

 唇は塞がれて。

「……ふ、ぅ……んっ」

 軽く触れる、なんてもんじゃない。

 貪るようにこれでもかと、しつこく、しつこく。隅々まで堪能されて、まるで口から体内の全てを喰らいつくされるような錯覚に陥る口付け。抵抗する力も、思考も、全部奪われて────

「……シノン」

 名残惜しく離れた唇が動き、どこか余裕のない声が発される。

「もう止まれんからな」

「勝手に……っひァ……!」

 思わず顔を見たら目が合って、鼓動が跳ね上がる。視線を逸らした瞬間に首筋に噛み付くようなキスをされ、言葉が途切れた。

「っは……ァ、ハッ」

 シャツを脱がす手付きが、口付けと同じく荒々しく、決して手際は良くない。だがそれが焦らしのようにじわじわと興奮を高めた。

「……ンは、ァッ」

 はだけていく服に沿って、首から鎖骨へと、口付ける箇所も下がって行く。喉元を噛み切られそうな勢い。聞こえる息遣いはまるで獣のよう。

「ん……、シノン」

「は、……んだ、よ」

 ぼうっと、されるがまま。力の抜けかけた体は立っているのがやっとだ。唇を重ねて酸素不足になったわけでもないのに、頭がうまく働かなくなってきて。気付けば上着は広げられ、鎖骨の下辺りにアイクの唇が触れている。

「あんたの肌、綺麗だな」

「はっ!? な、に、言ってんだよ! 馬鹿、かよ……っ男に、んなこと……!!」

 突然聞こえてきた台詞に、みるみるうちに赤面する。激しく脈打ってるのはシノンだけで、言い出した本人は変わらぬペースで意外にも柔らかい唇を這わせている。

「……っっ」

(タラシかよ、いきなり、綺麗なんて言葉)

 動揺が隠せない。熱い。口付けられた箇所だけじゃない。顔に体に、全てが熱を帯びてくる。

「気色、わりい……全然、嬉しくねえんだよ」

 言葉とは裏腹にどんどん体温が上がっているのが自分でもわかる。耳だって、きっと赤くなっているだろう。

「すまん」

 アイクが悪びれもせず放つ一言が、どうせ強がりだろ、と内心を見透かされているような気持ちにさせ、余計に鼓動が騒ぐ。その間もアイクは動きを止めずに、体を屈ませていき、鎖骨よりも下へ、下へ。はだけた胸元の、左の飾りに、唇が、触れた。

「っっひ……っ」

 先程までとは違う直接的な刺激に、喉を反らせた。転々としていた唇が、狙いを定めたかのようにそこだけ執拗に攻めてくる。シノンの反応が明かに変わったことに気付いたアイクは、もう片方の突起も指で刺激する。

「ーーっっ!!」

 興奮により僅かに張ったそこを人差し指と親指の腹でゆるく摘まれ、体がビクリと跳ねる。両の乳首を同時に攻められ、体の反応も、声も、抑えられない。快感を外に逃がそうとしても、アイクにしっかりと腰を抱えられ、身動きが取れない。むしろもがくほど、胸板を押し付けているようで。

「っ、っぁ、ん、んんっ」

 左にはぬるりとした緩い刺激。右には的確な強めの刺激。どちらも時々抑揚をつけ、強く吸われたり、歯を立てられたり、音がしそうなほど摘まれたり。その度に体が跳ね、嬌声があがる。

「あ、イク、っや、そこ、やめ……」

 縋るようにアイクの腕を掴み、震える体を支える。普通の奴なら痛がるほど遠慮なく力を込めても、鍛えられたアイクの体はビクともしない。

「……ここ、嫌いか?」

 やめろと言ったからなのか、散々弄んでおきながら、今更。動きを止めて、シノンを見ながら真顔で投げかけられた質問。

「感じているように見えたが、違うのか?」

「バッ、か、野郎……!」

 思わず口がから回る。

「てめえが、馬鹿の一つ覚えみたいにそこばっかりするからだろ……!」

「だから、嫌なのか?」

 感じてます、なんて言えるくちじゃない。だからって、嫌なわけじゃない。むしろ……逆、だろ。

(さっきは強引に口付けたんだ、強引に押し通せばいいじゃねえか!)

「鈍感も大概に……っぁ!」

 そう言いたくても言えず、込み上げてきた感情のままに怒鳴ろうと開いた口から、思い切り声があがる。

「っ……!」

 止めていたはずの行為が急に再開されたのだ。恥ずかしさのあまり、滲む瞳。

「……ん。感じている、でいいんだな」

 アイクは、なら続けるぞと確認して、唇を満足そうに僅かに笑みへと形を変える。その小さな変化に、息が詰まる。

「っっ!」

(っなんだよその顔!)

 普段は見せないアイクの柔らかな表情に、全身を支えていた腕からも力が抜けてしまい、ずるりと滑り、アイクにもたれかかる。その体を優しく抱きしめられ、再び唇を塞がれ、先程よりも長く口内を蹂躙される。

 執拗に攻めてみたり、突然やめてみたり、滅多にない顔見せてみたり。気付けばいつの間にか完全にアイクのペースに飲まれている自分がいて。

「……ん、ふ……。くそっ……アイクのくせに……」

 離れた唇から、銀糸が引き、ぷつりと切れる。それと同時に悔しさが言葉になって。

「もう……これ以上は、場所、変えろよ……!」

 全部アイクのペースにしてたまるか。俺が、させてやるんだ。

悔しくて悔しくて。でも、やめてほしくない。だからこれが、シノンが出来る精一杯の抗い。

「わかった」

 それを感じとったのか、アイクは再び微笑むと、快感に震えるシノンを抱え、天幕まで向かった────。




 はだけた服をなおすでもなく、ただ隠すように押さえながら。誰かとすれ違えば、何かがあったことは一目瞭然だ。考えると悪寒がしたが、振り払うようにアイクの胸元に顔を埋めしがみついた。もう、それどころではなかった。

 体は刺激を求め、敏感になっている。天幕に辿り着くまで、無意識に足を動かし、自らを刺激していたシノン。それを知ってか知らずか、そんなシノンの放つ色気にあてられ、アイクももはや止まることなど出来ない状態であった。

 ベッドに優しく横たえる。性急な手つきでシノンの服を剥ぎ取ると、邪魔だと言わんばかりに自分の上着も脱ぎ捨て、下肢を寛げシノンの足の間に割り入る。男二人分の体重がかかり、ベッドが軋む。改まって向かい合うと、先程以上の羞恥心にシノンは露骨に視線を逸らした。

「シノン」

 シノンの下腹部には、緩く起ち上がり、先走りの汁を漏らす性器の存在。アイクは生唾を飲んで、包み込むように握り扱けば、手の摩擦で硬度を増すと同時に聞こえる熱の篭った喘ぎ声。

「シノン」

 名前を呼ばれる度に動悸が乱れる。

 アイクは何度もシノンの名前を口にしては、体に触れ、握った手を上下に動かす。一糸纏わぬ姿を隅々まで堪能され、シノンは恥ずかしさでどうにかなりそうだった。視線が這う度興奮を煽り、ビクビクと性器を中心に体が震える。

「み、んなよ……」

 腕で顔を覆い、アイクの視線を遮る。そうしたところで何の意味もないことは頭ではわかっているが。目が合うとどうしていいか、わからなくなるから。

「シノン、俺も同じだ」

 やっと名前以外を口にしたアイクの言葉の意味が気になって、つい、腕の隙間から声の方を覗き見る。

「あんたで、興奮してる」

 力を弛めた腕を引かれ、アイクの、下肢の間へ。

「……っ、ぁ」

 そこには、脈打つアイクの雄。触れれば熱く、音がしそうなほど存在を主張している。

「……ずっと、こうしたいと思っていた」

「……っは?」

「あんたと、こうしたいと思っていた」

 余裕の無さそうな声で語る、意外な言葉。言い終わるか否かのタイミングで、アイクはシノンに覆い被さり、唇を塞ぐ。

「……あんたの嫌がることはしたくなかった」

 口付けの合間合間で言葉を紡ぐ。

「嫌なんだと、思っていた」

「……んだよ、っそれ」

「だから、もう抑えられん」

 アイクはひとしきり伝えたいことを口に出し終えると、シノンの先走りを絡めた指を、後孔へと運ぶ。

「んんっ……!」

 自分が、誘った。何もしない苛立ちから。でもアイクが何もしてこなかったのは、アイクなりに気遣ってたんだ。もっと素直に誘えりゃ……なんて考えたって、出来ないからこうなったんだけどな。

「ぁ、……っ、ぁ」

 だからせめて、体の力抜いて、受け入れられるように、なんて。

「っっ、く、ぁ……」

 それでもアイクの無骨な指が三本も入れば、力を入れずとも広げるのに時間がかかるきつさ。

「前ほどではないと思うが、多分、痛む」

 少しずつ解そうとしてはいたが、アイクも限界なんだろう。最後の理性を保とうとしている、荒い呼吸。

「許せ」

 途端指が全て抜かれ、熱も形も失ったそこが物欲しそうにひくついた。はち切れそうに起ちあがった性器は、俺への欲求の塊。間を置かず、アイクのそれが入口に触れ、思わず体が力む。

「ぁ……」

「文句は、後で聞く」

 有無を言わさず。割り開くようにして、アイクの、熱が。

「……つっ、ッア!」

 腰が大きく反る。指とは比べ物にならない存在が、少しずつ、中へ突き進む。

「ひ、っぐ、……ぁっ」

 先さえ入れば、後は勢いで奥まで届いて。

「んああっ……!」

 内壁を摩擦されれば痛みを超える快感に、甘い声。結合部が密着するほど深くまで押し込まれ、奥を突かれれば跳ねる体。繰り返し、繰り返し。余すことなく内部を堪能され、シノンには文句一つ紡ぐ余裕もない

「んっ、あっ、あっ……ひ、はぁっ」

 ひっきりなしに喘ぎばかりが飛び出す。

「ぁっ、い、っっ、……ああっ」

 時折感じる鈍い痛みが飛びそうになる意識を繋ぎ止める。それほどに、気持ちが良くて。どうにか、なってしまいそうだった。

「……シノン、っ」

 ただでさえ余裕のなかったアイクも、シノンの快感を追うのに、はたまた自身の快感を追うのに必死で切羽詰まっているようで。吐息混じりに名前を呼ばれれば、きゅうと締め付けて、またアイクから余裕を奪う。

「……っく」

 滲む汗と口呼吸。ノンストップで腰を打ち付け、肌のぶつかる音と、粘液の絡みつく音が天幕中に響く。がっつきすぎだろ、……って、そういう年頃なんだよな。

「っつに、っん、い、やじゃ……ぁっ」

「っは……、シノ、ン……」

 そんなアイクに、気遣わせて、我慢させて。俺が逆の立場だったら……、そうでなくても、結局俺が我慢できなかったわけで。

「どうして、んんっ、いい、か……わかんね、から、あっ」

 だからきっと、アイクの方が、すげえ我慢、してたんだろうな。そう思ったら、止まらなかった。

「は、ず……ぁ、しいっ、んあっ、はっ、だ、よ……」

 途切れ途切れで何を言ってるか、伝わっているかどうかはわからない。アイクに聞き返す余裕だってない。だからこそ言える。

「っ、から……お、っれ、も……っ」

 感じすぎて、箍が外れてしまったのかのように、下肢を汚す先走り同様にどんどん言葉が溢れる。

「俺、もっ、おまえとこう……っ」

 再び腕で顔を覆って。

「したかった……!!」

 思いのたけを、言い切った。

「シ、ノン……っっ!!」

 びくりと、アイクの雄が質量を増したのがわかる。

(今、どんな顔してるんだ?)

 表情が、気になった。でも、見ない。顔を覆い目も瞑り、遮断して。激しく続く行為に、それ以上は何も言わず、シノンは身を委ねただ喘ぐ。

「っっ、んう、っぁ……!!」

 やがて限界を知らせる体の震え。

「も、……っ」

「……俺も、だ」

 掴まれる足も、掴む手も、どちらのものともわからぬ汗で滑る。シノンにも、アイクにも絶頂の時が迫る。

「あんたも、一緒に……!」

 掠れ声のアイクに最後とばかりに深く突き上げられ、

「っっ!! っひ、っあぁあっ……!!」

 シノンは腰を震わせ白濁を放った。

「っ……!」

 追うようにして、アイクも引き抜いた自身から己の精を吐き出して……────。




「体、つらくないか?」

 座るアイクの隣で、シノンは体をアイクとは逆に向け横たわっている。服を着直す気にもなれず、そのまま。汗で濡れたせいで、少し体が冷たい。

 尻の鈍痛も、まだしばらくは治まりそうもない。その痛みが先程までのアイクとの行為を鮮明にして、鼓動がうるさい。

「いてえよ」

 顔も視線も向けずに、一言。だが決して怒っているわけではないのは、アイクも感じ取っているようだ。いつもの調子で謝ってくる。

「すまん。もう少し解してやりたかったんだがな」

 こっちは恥ずかしくてたまらないのに、しれっと言われて、なんだか悔しい。軽く舌打ちすれば、続けて声が聞こえてくる。

「次は優しくする。それじゃ駄目か」

「つ、ぎ……って、なんだよ」

 思わず振り向きそうになる体を、慌てて止めた。

「次は次だろ」

「……ケッ」

 またも恥ずかしげもなく言われた言葉に、冷めてきたはずの体が熱くなる。イエスもノーも答えずにいると、シノンの返答を待つようにアイクも黙る。

 二人、しばらく無言のまま。シンとした天幕に、かすかに聴こえる鳥の声。先刻とは違う、落ち着いた静寂。……嫌いじゃない。

「……次は」

 その静寂を自ら破り。自分の気持ちを素直に。

「次は、……がっついたら許さねえ」

……言えるようになるには、まだ、時間がかかりそうで。

「気を付ける」

「……バカアイクが」

 何もなくても。互いのことがわかるように。互いに少しずつ、素直に。

「……我慢しても、許さねえ」

「それはもう一度していいってことか?」

「ッ、バ……はぁっ?!」

「冗談だ。無理はさせん」

 まだ、先は長そうだけれども。

 打ち解けていけるように。

「シノン。愛してる」

「ケッ…………俺もだよ」






2015.5.22