傍に

「ふ、あ……ァ、イク……っ」

 艶めかしい音と共に耳に届くのは、擦れるシーツの音と、軋むベッドの音。

「ぁ、や……ぁア……っ」

 アイクが腰を動かすと、僕の体は揺れて。また酷く、音が聴覚を犯した。

「アイク……ぁ、いくぅ……っあァ…っ」

 暗がりの中、うまく位置を把握出来ずに空ぶる僕の伸ばした腕を、指と指が絡まるように掴まれる。

「セネリオ……」

「っあぅっ……あ……いく……」

 絡まる手を、力を込めて握る。アイクも、同じ強さで握り返してきて。

「ァ……願い……です」

「どうした?」

 喘ぎの所為でうまく言葉に出来ない僕の声を聞き取れるように、アイクは僕の顔に顔を近付けて。

「僕だけを……っふぁ……ん……僕だけを見て、いてください……っ」

 絞り出すように、思いを、告げる。醜い、独占欲。

「泣くな」

 離れられるのが嫌なのに、縛り付けるのも嫌な僕は、頭と心が矛盾している。

「ちゃんと、好きだから」

 耳元で囁かれる声が吐息混じりだからか、温かくて。

「もっと……ぉ」

 もっと、アイクの声が聞きたくて。

「好きだ。セネリオ」

 満たされる。僕だけに囁く声、言葉。

「ぁぃ、ク……好きっ……です……っ」

「セネリオ……一緒に……」

 激しく突き上げられ。

 互いに名を呼び合って、僕らは共に果てた。


 アイクが好き。

 自分と同じくらいに、あなたにも、僕を好きになってほしいなんて、きっと無理で。ずっと、僕だけを見ていてほしいけれど、それは我が儘で。


 だから…だからせめて、

 せめてずっと、


 ずっと僕の傍に……────